遊園地のパイレーツみたい

そうこうするうちに船室にも水が入ってきた。もういる。よかった、と思った。がものすごい音を立て始める。あわてて甲板に出ようとすると、海水がバシャーッと入ってきて、船員の一人が「バカャロー、中に入ってろ-!」と叫ぶ。その顔からは完全に笑顔が消えていた。吐き気をこらえて船室に戻ると、中では船員が慌ただしく立ち働いている。そこらにあるものを、あちこち転がらないようにロープで縛りつけたり、扉に鍵をかけたり。それが済むと、今度は甲板に出ていった。私はといえば、すでにその日、口にしたすべての食べ物を、船室の床にぶちまいた。その上は、やたらとつるつるすべる。まったく不甲斐ない。そうこうするうちに船室にとしゃが入ってきた。もうどうすることもできなかった。これで、私の吐潟物もきれいに洗い流される。よかった、と思った。ところが、水だけならいいのだが、その水の中には、甲板に転がっていたバケツやらモップやらが入っている。これが海水と一緒になって、勢いよくぶつかってくるのだから恐ろしい。最初は物陰に隠れてよけていたのだが、船自体がもう、それこそ遊園地のパイレーッみたいに揺れるので、だんだん物陰にたどり着くのが難しくなってきた。ようやく船室の真ん中にある柱にしがみつくと、戻ってきた船員の一人が、ロープで私の身体を柱に縛りつけてくれた。ありがたい。ところが、助かったと思ったのもっかの間、今度はその柱めがけて海水とモノが飛んでくる。あわててグリグリと体を動かして、柱の反対側に移動。するとまた海水とモノが……。再び体を柱の反対側へ・えんえんこの繰り返しである。もうどちらが上か下かわからない。四角い柱の角にこすられた背中が痛い。と、突然真っ暗に。恐ろしい。闇の中は地獄の思いだ。「明かりを消すな」とキャプテンが叫んでいる。フシと、頭に浮かんだのは、このまま船が沈むようなことがあったら、自分は柱に縛られたままおぼれてしまうんじゃないかということ。体が明かりの方を向いたとき、必死でロープの結び目を腹のほうにたぐり寄せた。これで、もしものときにも、ロープをほどいて脱出できる。あれは船室のドアだったろうか、なにかのうタだったのか、水の勢いで外れて、船室を漂っていたのを、浮き袋代わりにしようとつかんで、これで大丈夫、私は死んだりしないと思ったとき、極度の疲労とかすかな安心感からか、メリメリ、ドスンという恐ろしい音の中で、意識が遠のいて行くのがわかる。

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