椅子にとって一番必要な機能

ものを載せたり、肘をついたりする板の部分である。脚なんか邪魔で、なければないほうがいい。ドイッモダンの思想とデザインを徹底したテーブルには、あたかも空中に板が浮いているかのように見えるものがある。合理的な発想の転換といったらいいだろうか。下から支えるから邪魔な脚が必要になる。もし、上から吊るすようにしたら、少なくとも脚はいらなくなるじゃないか。椅子にとって一番必要な機能は何か。リラックスを目的とした椅子なら、お尻をしっかりと包みこむような座面と、ゆったりと支えてくれるような背もたれがいいだろう。仕事用の椅子だったら、背筋はしゃんと伸びるほうがいい。そのほうが眠くなったりしないはずだ。ドイツでは、機能主義とはこういうものだと肌で実感することができた。ロマネスクからルネサンスそしてアールヌーボーへと錬磨きれたうえでの近代デザインだけに説得力がある。反対に、それが悪いというのではないのだが、イタリアに来ると、家も家具も急にダラーッとした丸い感じになってくる。ギリシャなんかでは、岩山に住宅が一体化し、すでに一つの風景となっていた。南欧や南仏の家は、白い壁に赤い屋根に限ると、誰かが統制しているかのような統一感を感じた。人の住む家とは、すべてその地方独特の気候、風土の中に建っていることを学んだ。建築家を目指す私にとって、まだ若く、物事の吸収が速いこの時期に、歴史あるヨーロッパの建築物の数々を、目のあたりにして見ることができたのは、本当によい体験だったと思う。まして、資金に乏しい旅だったから、ホテルなどに泊まって、観光地に足を運ぶのとは違ったものが見られた。また、ときには旅先で知り合った友達の家に泊めてもらったり、野宿をしたこともある。それほど窮乏した旅だったのである。

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