心の底から感動

私を心の底から感動させた。この人に会いたい!血気盛んな私は、建築家協会の事務所に戻り、「素晴らしい作品に感動したので、ぜひともアルバー・アールト氏に会いたい。オフィスの住所を教えてほしい」と、いちかばちか尋ねてみた。すると、北欧の人たちは、大らかな人が多いのだろうか、あるいは遠い(当時のヘルシンキからは、最果てといっていい)極東、日本からやって来た建築学科の学生が珍しかったのだろうか、丁寧に紹介され、大建築家アルバー・アールト氏自ら時間をさいて応対してくれた。いまの自分の状況を思えば、忙しくて、とてもそんな学生に構っていられないはずなのに、オフィスの中を談笑しながら案内してくれた。芸術家としてのゆとりを兼ね備えた紳士だったのである。モスクワ大学で門前払いを食らっていただけに、私にとって、これはとてもうれしいことだった。私は再び勇気を振り絞って、「このオフィスで、勉強させてもらうことはできませんか?」と、図々しくも持ちかけてみたのだが、さすがに、これは丁重に断られてしまった。若さとは本当に怖い。今となっては恥ずかしい思い出だが、若い頃の怖いもの知らずの体当たり作戦というのも、建築家の卵の経験としては、とても大切なことだと思う。

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