あこがれの建築家アルバー・アールトに会う
■あこがれの建築家アルバー・アールトに会う。そんなこんなで美しい北の水の都、レニングラード(今のサンクトペテルブルグ)を経てソ連を後にし、使うはずのなかった切符で、フィンランドの首都ヘルシンキに着いた。ソ連国境を越したとたん、その風景の急激な変化は驚きだった。木々の色、町の色、屋根の色、車の色、自転車の色、その色という色が、明るく鮮やかに見えたのだ。ソ連から地続きで、地形だって植生だって、急に変わるわけではないのに、それは確かに違って見えた。鯵蒼と暗い森は、明るい白樺の並木に変わり、少女が風にブロンドの髪をなびかせながらこぐ自転車の車輪は銀色にキラキラ光っていた。明らかに空気が違う。私は、ワクワクした気持ちで、ヘルシンキの建築家協会のセンターに足を運んだ。建築家協会というのは、どこの国にもたいていはあって、その国で実際に活躍している建築家たちと、その作品を紹介してもらうことができる。著名な建築家の作品は、写真などでも見ることができるが、やはり現物を見ることができれば、それが一番だ。私は当時、ご当地フィンランドの建築家、アルバー・アールトのファンだった。ソ連亡命に失敗し、はからずもその作品を見るチャンスに恵まれたというわけである。早速、オリンピック錘オリンピック競技場やら、住宅やらを次々に訪ねて回った。実際に触れてみたアルバー・アールトの作品は、モダンかつ合理的で、しかも日本的でさえある。